ジグリング
(貧乏ゆすり)とは?
ジグリングとは、座った状態で足や膝を小刻みに動かす運動のことを指し、一般には「貧乏ゆすり」として知られています。これまで「行儀が悪い」「落ち着きがない」といった否定的な印象を持たれがちでしたが、近年の整形外科・運動器研究では、関節や筋肉に負担をかけにくい軽微な運動として注目されています。
特に高齢者や、膝・股関節に痛みを抱える方にとって、「運動したほうが良いのは分かっているが、強い運動は難しい」というケースは少なくありません。そのような方でも実践しやすい動きとして、ジグリングは再評価されつつあります。
筋肉は「内分泌臓器」
―マイオカインの働き
近年、筋肉は単なる「体を動かす組織」ではなく、マイオカインと呼ばれる生理活性物質を分泌する内分泌臓器であることが分かってきました。
資料内でも詳しく述べられているように、筋肉が収縮することで分泌されるマイオカインは、以下のような全身への好影響をもたらすことが示唆されています。
- 血流の改善
- 慢性炎症の抑制
- 骨代謝・関節環境の維持
- 代謝改善(糖・脂質代謝)
- 脳機能や精神面への良好な影響
ジグリングは、強い負荷をかけずに筋収縮を繰り返すため、マイオカイン分泌を穏やかに促す動作と考えられています。
ジグリングと
膝・股関節への影響
整形外科領域で特に重要なのが、変形性膝関節症や股関節症との関係です。
これらの疾患では、
- 関節軟骨の摩耗
- 関節周囲筋の筋力低下
- 血流低下による関節環境の悪化
が進行要因となります。
ジグリングのような小さな反復運動でも、
- 下肢筋のポンプ作用による血流改善
- 関節内圧の過度な上昇を伴わない運動刺激
が期待でき、「動かさないことによる悪循環」を断ち切る補助的手段として位置づけることができます。
ただし、ジグリング単独で疾患が治癒するわけではなく、医師の診断のもとで、運動療法やリハビリの一環として取り入れることが重要です。
全身への
健康効果と健康寿命
マイオカインを介した運動器から全身への影響として、
- 生活習慣病リスクの低減
- 認知機能や精神状態への良好な影響
- フレイル・サルコペニア予防
といった点も示されています。
激しい運動が難しい方でも、「まったく動かない」状態を避けることが健康寿命延伸の鍵であり、ジグリングはその第一歩として活用できる可能性があります。
正しいジグリングのポイント
整形外科的に推奨されるのは、以下のような方法です。
- 椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばす
- かかとを床につけたまま、膝や足首をリズミカルに動かす
- 痛みが出ない範囲で、1回数分から開始
- 長時間連続せず、こまめに行う
痛みや違和感がある場合は中止し、自己判断で続けないことが大切です。
すべての方に適しているわけではありません
急性の関節炎、重度の関節変形、術後早期など、状態によってはジグリングが適さないケースもあります。
そのため、「貧乏ゆすりをすれば健康になる」といった一面的な理解ではなく、整形外科医による評価を受けたうえでの実践が重要です。
当院の整形外科的スタンス
当院では、患者さま一人ひとりの関節・筋肉の状態を評価し、ジグリングも治療の一つの選択肢として、安全性と医学的根拠を踏まえた形でご提案しています。
膝や股関節の痛み、運動不足が気になる方は、お気軽にご相談ください。
